おう、今日も語らせてもらうぜ。
テーマは「職場恋愛」。
ちょっとドキッとするやつだろ?
そう、社内恋愛・オフィスラブ――響きだけで80年代の香りがする。
でもな、俺はずっと人事畑を歩いてきた身として、時代ごとにこの「恋愛の温度」がどう変わってきたかを肌で感じてるんだ。
今日はその変遷を、昭和から令和までぶっ飛ばして語ってみようじゃないか。
【昭和:愛と残業のロマンチズム時代】
俺がまだ若手だった昭和末期――オフィスには、今じゃ信じられないような“熱気”があった。
いや、冷房が効いてなかったって意味じゃねぇぞ。
人と人が近かった。息づかいも、匂いも、恋も。
残業ってのは“美徳”だった。
夜10時を過ぎてようやく「じゃあ飲みに行くか!」。
先輩が後輩を誘って、居酒屋で焼き鳥をつまみながら愚痴を言い合う。
その流れで気になる子がいたら、ちょっと多めにお酌してやる。
カラオケでは安全地帯かチューリップ、たまにクワタ。
「愛のメモリー」なんて歌えば、翌朝には社内の半分が知ってた。
つまり、恋がオープンだった。
「部内カップル誕生!」なんてニュースが回覧板みたいに広まっても、誰も眉をひそめなかった。
むしろ“あいつら、頑張れよ!”と温かく見守る空気すらあった。ただし、その裏で“結婚=退職”が当たり前だった時代でもある。
特に女性社員にとって、恋はキャリアを閉じる扉でもあった。
いわば“恋のゴールは職場の出口”。
だから、昭和の職場恋愛はスイートでありながら、どこか刹那的なロック・バラードだったんだ。
【平成:恋も管理職もコンプライアンスに怯える時代】
時は流れ、バブルが弾けた90年代。
“愛より効率”が企業文化の合言葉になっていった。
パソコンが一人一台、携帯が普及し、残業よりメールが支配する世界。
「課長、FAX流しておきました」から「課長、メール送っておきました」に変わり、
そこにはもう、人肌のぬくもりがなかった。
職場恋愛も、徐々に裏方に追いやられる。
なぜって? 情報漏えい、ハラスメント、業務への影響――人事部的にはどれもリスクの塊だったからだ。
“社内恋愛禁止”を掲げる企業も出始めた。
建前は「公平性の担保」だけど、実際はトラブル防止。
別れた後の“修羅場人事”が怖いんだよ。
上司と部下が別れた瞬間に部署移動を希望されるなんてのは、もうお約束コース。
平成の職場恋愛は、カーテンの向こうのジャズセッションみたいなもんだった。
音は響いてるけど、誰も表に出さない。
恋人同士でも「社内では他人の顔」。
エレベーターで偶然会っても、無言でスマホを見る――そんな時代。でもな、人間って不思議なもんで、
禁止されればされるほど燃えるんだよ。
だからこそ、あの時代の恋は“地下活動ロック”だった。
表には出せないけど、心の中ではドラムが鳴ってた。
【令和:愛も働き方もハイブリッド】
そして今、令和。
職場恋愛の風景は、まるでリモートワークのように変わってしまった。
まず、出会いが職場じゃなくなった。
マッチングアプリ、SNS、副業コミュニティ。
「同じ会社で働いてます」が出会いのきっかけになる確率は、もはやレア。
Zoom会議の背景に映る部屋のポスターのほうが、共感ポイントになったりする。
ただ、それでも“職場で恋する人”はゼロじゃない。
いやむしろ、コロナ禍を経て「オフラインでの繋がり」が恋の特効薬になってる。
オンライン飲み会が続いた反動で、リアルな接点の尊さを再認識した若手が増えたんだ。
でも今の若者たちは、上手い。
関係をこじらせず、オープンすぎず、ドライすぎず、大人の距離感で恋をしている。
“交際報告”もLINEひとつ。
別れも淡々と。
昭和のようなドラマも、平成のような隠密もない。
恋もキャリアも“共存”する時代になった。
育児休暇を男女で取り合うように、
恋愛も対等、フラット。
「上司と部下の恋」は慎重に扱われるけど、
同僚同士なら会社も特に口を出さない。そして、会社側も柔軟だ。
人事の立場から言うと、職場恋愛を全面否定する理由はもうない。
問題はどう関係をマネジメントするか。
「パートナーが同じ部署にいると業務評価に影響が出るか?」
「破局後のトラブル防止策は?」
こうした線引きを明文化する企業が増えている。
つまり、恋もガイドラインの時代に突入したわけだ。
【恋は自由、でも組織はバンド】
さて、ここで人事部長としての本音を言おう。
俺は、職場恋愛を否定しない派だ。
だって、恋ってのは人間が生きてる証だろ?
情熱を持って仕事してる人間が、隣にいる誰かに心惹かれるのは自然なことだ。
ただし、バンドと同じで“チューニング”が大事だ。
恋が始まると、ついテンポが走る。
相手の前でいいとこ見せようとして、業務が偏ったり、判断が甘くなったり。
それはまるで、ギターの弦を張りすぎて切るようなもんだ。
組織はバンド。
恋人がドラムで、上司がベースで、俺がギターだとする。
全員が違うリズムを刻んでも、ちゃんとハーモニーが出るように調整しなきゃならない。
そのためには、恋をしてもプロであれ。
それがロックな社会人の矜持ってやつだ。
【余談:社内結婚のその後】
人事データを見てると、社内結婚した夫婦って、意外と離職率が低い。
お互いの仕事を理解してるから、転勤や育児の苦労も共有できる。
逆に、離婚したケースも当然ある。
けど、その後も意外と“社内に残る”んだよな。
ドライに割り切って、普通に仕事してる。
昔なら考えられなかったが、
令和の職場は“恋も別れも業務の一部”くらいに捉えられるようになってきた。
いい意味で、成熟してる。
【そして今日も、オフィスには音がある】
昼休み、休憩スペースでふたり並んで弁当を食べてる新入社員を見かけた。
あぁ、あれはきっと、始まったばかりのラブソングだ。
スマホの画面をのぞき込みながら笑ってるその横顔――
それを見てるだけで、なんか元気になるんだよ。
恋ってやつは、やっぱり“生演奏”なんだ。
どんなAIも、どんな制度も、そこにある温度だけは再現できない。
だから俺は言う。
恋をするなとは言わない。ただ、弾くなら最後まで責任持って奏でろ。
それが、ロックな職場恋愛の作法だ。
【エンディング】
昭和の恋はロマンチックなバラード。
平成の恋はミュートされたアコースティック。
令和の恋はクラウドで響くハイブリッド・ビート。
どの時代も、恋は人を動かし、組織を揺らす。
でも、それでいい。
だって、静かな会社なんてロックじゃないだろ?
今日もオフィスのどこかで、
小さな恋のイントロが流れてる。
それを聴き逃さない耳を持つこと――
それが、人事部長としての俺の“ロック魂”なんだ。

