やあ、今日も読んでくれてありがとう。
ロックな人事部長だ。
コーヒーより濃いブラックを飲みながら、朝から学生のエントリーシートを見てる。
ふと手が止まった。
「学生時代、長期インターンで営業アシスタントを経験しました」――。
……うん、立派だ。でも、その一文だけで“経験者”を名乗るには、ちょっと音が軽い。
インターンってのは、企業と学生の“お見合い”みたいなもんだ――って言われることが多い。
でも俺から言わせりゃ、それは違う。
インターンは“ライブ”だ。
スタジオ(=大学)で練習してきたことを、観客(=社会)に向けてぶっ放す最初のステージ。
アンプのボリュームをどれだけ上げても、音が出なきゃ意味がない。
インターンとは、自分の“音”を社会に試し撃ちする行為なんだ。
第1章:短期インターンは「フェス」だ。熱気を浴びて、自分の立ち位置を知れ。
まずは、よくある1日~1週間の短期インターン。
夏や冬になると、まるでフェスのように企業がブースを並べて学生を迎える。
「わが社のミッションは○○」「うちのカルチャーは××」――どこも似たようなPR。
正直、参加する学生も「社会勉強の一環」と軽いノリで来るケースが多い。
だが、この“フェス的インターン”こそ、社会の空気を初めて肺いっぱいに吸い込む瞬間なんだ。
スーツを着て、朝からオフィス街に立つ。
周りは慣れた社会人ばかり。緊張で心拍数がBPM180。
開始5分で汗が止まらない。
それでも、目の前のグループワークで自分の意見を出す。
それが「ステージデビュー」の瞬間だ。
実際にうちの会社でも、夏フェスのようにインターンを開催している。
テーマは「人事制度の未来をデザインせよ」。
ある年、参加した学生がプレゼンの最後に、こう言ったんだ。
御社は“従業員を守る会社”ではなく、“従業員と共に戦う会社”になるべきです。
その一言に、現場の人事課長が痺れた。
彼は後に本採用でその学生を呼び戻し、今ではチームの中核を担っている。
たった数日でも、刺さる発言ひとつで未来は変わる。
短期インターンとは、“自分の音を鳴らすきっかけ”を掴む場所なんだ。
第2章:長期インターンは「ツアー」だ。地味だけど、確実に成長する。
一方、長期インターンは全く違う。
これは「全国ツアー」のようなもんだ。
1日限りの派手さはないが、続けることで“筋肉”がつく。
たとえば、ある学生が半年間、うちの広報チームに入った。
最初は「SNSでトレンドを調べて」と指示されるだけ。
けれど、数か月後には「社長インタビューの構成案」を提案するまでに成長した。
彼女が最後の日に言った言葉を、今でも覚えている。
最初は“社会人ごっこ”のつもりだったけど、今は“社会の一員”の自覚が持てました。
これだよ。
インターンの本質は“会社を知ること”じゃない。
「社会で働く自分」を知ることなんだ。
ツアー中はトラブルもある。
締切を守れなかったり、先輩に怒られたり。
でも、それを繰り返すうちに、「報連相」の意味や「責任感」の重さが体に染みつく。
ロックバンドだって、ライブの本番よりリハの方が何倍もキツい。
でも、そのリハで汗を流すからこそ、本番で“音が合う”んだ。
第3章:インターンの“誤解”たち
さて、ここでちょっと現場の人事として、よくある誤解をいくつかぶっ壊しておこう。
「インターンに参加したら内定が近づく」
確かに、採用直結型のインターンもある。
でも、学生の中には「参加=内定」と勘違いしてるケースが多い。
それは、ライブを観に来ただけで“メンバー”になれると思ってるようなものだ。
本番(本採用)では、観客席からステージに上がる覚悟が問われる。
「有名企業のインターンに行けば就活で有利」
ブランド志向の学生が多いが、これも危険な思考だ。
大事なのは、どこで何をしたかより、そこでどう感じ、どう動いたか。
小さなスタジオでも、音を磨いた経験がある奴は、でかい会場でも光る。
「自分にはまだスキルがないから無理」
そんなの関係ない。
インターンで求められるのは「完璧さ」じゃなく「吸収力」だ。
ギター初心者だって、毎日弾けば3ヶ月後にはコードを覚える。
同じように、社会のコード(暗黙のルール)も、体験しなきゃ覚えられない。
第4章:企業側の“本音”と“期待”
さて、ここからは人事部長としての“裏トーク”だ。
企業がインターンをやる理由、それは単なる「採用活動」ではない。
うちの会社も、昔は「採用前の選別」目的でやってた。
でも、ある年に一人の学生が言ったんだ。
私は、御社の制度を変えたいと思って参加しました。
その衝撃で、俺たちは気づいた。
インターンは、企業も学生から“評価される場”なんだと。
それからというもの、うちは“リアルすぎる体験”を提供している。
営業同行でクライアントに頭を下げる。
製造現場で油にまみれる。
人事ミーティングで社員の愚痴を聞く。
「そこまで見せる必要ある?」と他社に言われたが、俺たちはあえて見せる。
なぜなら、それこそが現実であり、信頼の始まりだからだ。
第5章:インターンで“響く学生”の共通点
ここで、俺が何百人も見てきた中で、印象に残った学生たちの共通点を教えよう。
- 素直であること
→「分かりません」と言える奴ほど伸びる。 - メモを取る癖があること
→何よりも“聴く姿勢”が美しい。 - 質問が具体的
→「どうすれば評価されますか?」より、「この提案を通すには何が足りませんか?」と聞ける。 - 他人の成功を喜べる
→チームで輝くやつは、必ず信頼を勝ち取る。 - 最後に感謝を残す
→メール一通でも、社会人は“礼儀”を見ている。
インターンが終わっても、印象が残る学生は、この5つを自然にやってる。
まるでステージの最後に、アンコールの拍手を起こすミュージシャンみたいに。
第6章:SNS時代のインターンは“見られている”
最近では、インターンの体験談をSNSに投稿する学生も多い。
「この企業の人事、優しかった」「この会社の会議、地獄だった」――。
そのリアルが瞬時に拡散される時代。
つまり、企業も学生も、互いに“ライブ配信中”なんだ。
俺はそれを悪いことだとは思わない。
むしろ健全だ。
なぜなら、透明性が増すことで、企業も“人間らしい誠実さ”を磨くようになるからだ。
インターンの現場は、企業文化の縮図。
そこで嘘をつけば、SNSに暴かれる。
逆に、そこで真摯に向き合えば、“ファン”が増える。
採用ってのは、最終的には「信頼の音楽」なんだよ。
第7章:最後に、これからインターンに挑む君へ
もし、これを読んでいる学生がいたら、俺からひとつだけ伝えたい。
インターンを「就活の準備」なんて思うな。
それはまるで、リハーサルを「遊び」だと思ってるようなもんだ。
リハは本番だ。
そこでの一瞬一瞬が、次のキャリアを形づくる。
そして、どんな小さな会社でも、どんな地味な業務でもいい。
君がそこに本気で向き合えば、必ず得るものがある。
それが自信でも、挫折でも、発見でも構わない。
全部、未来のアンセムのイントロになる。
人生のアルバムの1曲目――それが、インターンなんだ。
エピローグ:ステージの裏で考えること
今日もまた、学生たちがオフィスにやってくる。
ぎこちない笑顔で「よろしくお願いします」と言うその声に、俺は毎回、若い頃の自分を重ねる。
思い出す。
初めて上司に怒鳴られた日。
初めて同期と徹夜した夜。
そして、初めて“仕事って面白い”と思えた瞬間。
インターンとは、そんな人生の“前奏”だ。
焦る必要はない。
でも、弾かないと始まらない。ギターの弦を張り替えるように、自分の心も張り直して臨め。
チューニングが合えば、社会のステージでもきっと響く。
ロックな人事部長より。
「お前の人生のイントロ、もう鳴ってるぜ。」

